くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる   子規

満開の桜花を散らした今日のような春の嵐からは程遠い景色ですが、いまごろの季節になると、つい思い起こす歌です。

あるラジオ番組で、子規の研究家でもある俳人が話されていたことです。

子規は、34歳という若さで亡くなっていますが、22歳ごろからたびたびの喀血にみまわれ、死を迎えるおおよそ7年間ほどは、ほとんど病の床にある状態だったようです。

私からすると、そんな人生は、憂鬱で悲しみに満ちた幸せ薄いものだとしか思えないのですが、でも子規は、『自分は病気であるからこそ、このように日々歌や句を詠み、歌論を綴ったりできる楽しみを得ることができている』と、まるで病んでいることが幸せであるかのように語っていたというのです。

「獺祭書屋主人」…子規の号の一つです。今を時めくブランド酒が脳裏をかすめた方! 子規の歌と言葉を肴に盃を傾け、春雨する休日をそれぞれの幸せを感じながら過ごされてみてはいかがでしょう。