【自然農】

あゆみの丘の農業クラブは、部分的に、「自然農」をモデルに活動を行っています。

慣行農法に対する自然農とは、「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」農法です。健康志向から有機栽培(オーガニック)が注目されていますが、自然農は有機栽培を、ある意味で、さらに突き詰めた農法です。

グレーシー柔術で有名なグレーシー一族の格言で、「健康は口から、老化は足から」というものがあります。子どもたちの口に入るものだから、どうせなら健康な作物を育てたいです。それに私は農薬を使うと、たとえそれが大して人体に害がないものであっても、気分的に頭痛になってしまうのです。農薬不使用のくだりはフェアトレードのコンセプトと同じで、自然農は、食べる人にも、作る人にもやさしい農法です。

自然農で育てられた作物はたとえ無骨な外見でも、自然の滋味があふれたものになることでしょう。

写真解説

上 昨夏、自然農で育てた枝豆

下 給食のひと品として生まれ変わった姿 ※グツグツ茹でた後に氷で冷やす手間!(外国人なら、「日本人って手間暇を惜しまず不思議」と言うでしょう)

 

自然農は一見、楽な農法に見えますよね。ですが、自然農の肝は、放任ではない、ということです。絶妙なバランスで雑草や虫との共生と競合があるのです。

自然農では雑草の中で作物を育てますが、作物が雑草に負けない程度の手入れは行います。私も経験上、過保護に草刈りをしなくても作物が元気に育つことを知っていました。むしろ雑草に守られて害虫の被害をほとんど受けなかったこともあり、自然の妙に感心したものです。ただしこの場合は、たまたま雑草と作物のバランスが適正だっただけで、通常は、少し気を抜けば雑草に負けて作物がダメになってしまうのだと思います。

自然農は、農薬や肥料による品質管理と農業機械による大量栽培、大量生産ができないゆえに、それなりの規模になると慣行農法以上に手間がかかると言われています。その上、その土地土地の土壌や雑草、タネや作物の癖(個性)を知るための膨大な時間と経験値が必要だと言われており、自然農の世界では師弟関係を通して技術と知識の伝達が行われているようです。

 

私たちは生業としての農業を目指しているわけではないのですが、自然農のこのような考えは私たちの仕事の参考になると思うのです。

作物の育つ力を信じる点、放任に見えるが適切にさりげなく管理されている点、作物そのものへのアプローチに加え、環境の調整により作物が育つことを促進する点、等々。

特に参考にしたいのは、作物はほどよいストレスを通してこそたくましく成長すると考える点です。つまり、リスクが成長の力になるとの発想です。過保護や無菌室では子どもは育ちません。適正な量と質の子ども家庭支援について、思いを巡らせたいものです。

 

次回の「見本にしたい哲学」は、老人介護分野でリスクに関する先進的な実践を行う「ユマニチュード」を紹介します。

写真解説

雑草の中で育つニンニク

施設長 いのうえ